
日本では2016年頃から金融機関から個人投資家への不動産投の融資額が増えはじめ、「不動産投資ブーム」が起こりました。
それまで富裕層が行っていた不動産投資が、サラリーマンの副業としても人気となりました。
不動産投資ブームが起こった理由は一体何でしょうか?
2018年のスルガ銀行の不正融資の事件で「不動産投資ブームは終わった」と嘆く投資家も存在しますが、果たしてそうなのでしょうか?
金融庁が発表したデータなどを元に、「不動産投資ブーム」の概要と不動産投資ブームが起こった要因、スルガ銀行と不動産投資ブームの関係について言及していきます。
2016年頃より投資用不動産購入資金のため金融機関による融資額が増え、「不動産投資ブーム」が到来しました。
金融庁が2019年に公表した「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」では、「個人が投資目的で居住・宿泊用不動産を取得するための融資が2016年と2017年の3月期に拡大」し、「一棟建アパート等の土地・建物を一体的に取得するための融資額も、富裕層の節税ニーズのほか、給与所得者層の資産形成ニーズを背景に増加してきた」との見解を示しています。
金融機関の不動産向け貸出し残高は以下の通り増加傾向にあります。
金融庁の資料では「サラリーマンの資産形成需要の高まり」が背景にあるとのことですが、不動産投資がブームになった理由はそれ以外にも存在します。
不動産投資がブームとなり、注目されている理由(5つ)を見ていきましょう。
目次
2.不動産投資ブームの理由5つを検証
不動産投資がブームになった理由の一つとしては、日本銀行のマイナス金利政策によって個人投資家が融資が受けやすくなったこと、老後の資産形成や公的年金への不安、法人でも不動産投資が活発化し、海外投資家からも日本の不動産が人気になっていること等の5点が挙げられます。
特に「老後の資産形成」は不動産投資に限らず、多くの方々が投資を始めるきっかけとなっています。
1)日本銀行の政策で融資が活発化、ローンが低金利に
日本銀行の金融緩和政策により、住宅ローンの金利は低水準を維持しています。
※参考:住宅金融支援機構https://www.flat35.com/loan/atoz/06.html
2016年の「マイナス金利政策」は、日本銀行が金融機関の預金の一部をマイナスにする金利政策です。
それにより金融機関の融資が活発化、個人・法人共に低金利で融資を受け易くなり、住宅ローンの金利の低下により工場や倉庫など、法人の建物の融資も受けやすくなっています。
2022年現在は住宅ローンの金利が1%台という金融機関も珍しくありません。
不動産投資ローンも金利が低くなり、金融機関が融資額の拡大を図ったため不動産投資市場は活性化しました。
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2)老後の資産不足、年金への不安
2019年6月に金融庁が発表した「老後に公的年金以外で2000万円の資産が必要」といういわゆる「老後2000万円問題」は、後に撤回されたもののTVや新聞等マスメディアで大きく取り上げられ話題となりました。
実際、公的年金の受給開始年齢が引き上げられ、将来の年金制度に不安を感じる方も少なくありません。
老後の資産形成の必要性の高まりが、「不動産投資」を行う人の増加へと繋がりました。
不動産投資のメリットの1つに「安定した家賃収入」が挙げられます。
定期的な収入を安定的に得られる投資としては、株式投資や投資信託の配当(分配金)も存在しますが、運用成績や景気によっては配当が低くなる可能性があります。
賃貸住宅は入居者にとっては「なくてはならないもの」のため、家賃収入への安心感を持つ投資家は多いです。また不動産という「現物」に対する投資は不況に強く、資産価値が減りにくいと言われています。
老後に公的年金以外の補完として不動産投資で家賃収入を得たいという大家(不動産投資家)が増えた結果、不動産投資がブームになりました。
3)個人投資家の資産形成意欲の高まり
昨今、不動産投資に加え、株式・投資信託も含めた個人投資家の数が増加しています。
個人投資家が増加した背景には上記に挙げた老後の資産形成需要に加え、NISA制度やiDeCoによる政府の非課税制度を利用した投資促進策が若い世代を中心に浸透してきたことが挙げられます。
また、新型コロナ感染拡大により、家にいる時間が長くなりネット証券会社の口座開設数が急増しました。
投資を始めた方向けのアンケート結果では、証券口座を開設し、投資を始めた理由の第1位は「老後の資産形成」、第2位は「儲けたい」次いで「経済の勉強をしたい」となっています。
4)東京を中心に再開発が進んでいる
東京都ではこれまでに205の地区で再開発が行われ、2021年1月現在38地区で市街地の再開発が進められています。
八重洲一丁目では歩行者空間や屋内広場の整備、東京駅とバスターミナルの直結が行われ、日本橋一丁目ではビジネス交流施設・高級ホテル等によって構成される都心型複合施設の整備、改札口の新設などにより来訪者の増加を図っています。
再開発により利便性が高くなった地区は入居者需要が高まり、投資家にも人気があります。
5)法人でも不動産投資が活発化、海外投資家からも人気
日本の不動産投資は個人投資家だけではなく、国内企業や海外の投資家からも需要が拡大しています。
国土交通省が建設会社・金融機関等の国内の機関・企業に対して行った不動産投資のアンケート結果を見てみましょう。以下は2007年に企業に対し不動産投資対象の種別と将来の見通しを尋ねた結果となっています。
実物不動産への投資が3割、J-REITは18%となっています。最も多い回答が「該当なし・不動産投資はしていない」と答えた企業でその比率は約40%です。続いては2019年度の同調査の結果をご紹介します。
※参考:国交省https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000112.html
現物不動産への投資は27.2%、「信託受益権」とは不動産を信託銀行等に委託、委託者が得る利益を受け取る権利を指します。信託受益権による投資を含めると、REITといった証券化していない不動産への投資は合計56.5%に上ります。
さらに「該当なし」と答えた企業は25.3%と12年前(2007年)に比べ約15%減少しました。
海外の機関投資家(金融機関などプロの投資家)からの日本の不動産投資は投資金額が増加しており、2020年の1~9月期には東京への不動産投資額が世界でNo.1 になりました。
3.「スルガ事件」で不動産投資ブームは終わりを迎えた?
2018年に起きた「かぼちゃの馬車」事件は、シェアハウスを運営する不動産会社が経営破綻し、契約を結んでいた大家675人に約23億円の家賃収入を支払えなくなった事が発端となっています。
不動産投資会社とも提携していた「スルガ銀行」は与信資料を改ざん、契約書を偽造する等不正融資を行っていたことが発覚しました。スルガ銀行から融資を受けた大家(不動産投資家)の中には高値で物件を買わされ返済に行き詰まる人もいたようです。
大家達は弁護士と被害弁護団体を結成しスルガ銀行を訴えました。不動産を物納する事により債務を帳消しにすることで事件は決着しましたが、この「かぼちゃの馬車」事件は不動産投資業界に悪影響を及ぼし、金融機関の個人への新規融資額は減少、投資用アパートの価格も下落に転じました。
但し、4年を経た現在、個人投資家へのアンケート結果によると、投資意欲は旺盛でコロナ禍にも関わらず物件を積極的に探している人は58.1%に上ります。
また「物件価格が上昇している」と答えた投資家は23.4%ですが、上昇している理由として「国内投資家への需要が増えているから」という理由が1位となり57.9%を占めています。
機関投資家(投資のプロ)や海外投資家に加え、日本国内の個人不動産投資家も今でも不動産投資に意欲を示す方が多いようです。
4.不動産投資ブームはまだまだ続く?
不動産投資家向けの金融機関融資が増大して不動産投資ブームが到来し、ブームとなった理由5つを解説しました。スルガ銀行の不正融資事件もありましたが、未だ不動産投資に意欲を示す投資家は多数存在します。
個人の投資家を始め、海外の投資家や法人が日本の不動産投資に強い意欲を見せていることから、不動産投資はブームと言うより資産形成方法の1つとして定着していく可能性は高いと考えられます。
最近では「不動産クラウドファンディング」なる新たな投資商品も出回り始めました。不動産クラウドファンディングは投資額が月1万円からとリスクが低いことから、若年層や女性にも浸透し始めています。
日本の低金利政策が続き尚且つ年金問題など、老後の収入に不安がある以上、不動産投資ブームは続くことでしょう。
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