目次
- 任意売却とは
- 任意売却のメリットとデメリット
- 任意売却の仕組みと成功・失敗
- 任意売却と競売の違い。競売の回避方法は?
- 任意売却と自己破産について
- 自己破産したら借入金は帳消しになるのか?
- 住宅ローンの抵当権(担保権)について
- 任意売却後の残債務の返済はどうなるのか?
- 任意売却が不成立になる原因とは?
- 住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の交渉について
- 任意売却が可能な滞納期間と状況とは?
- マンションの滞納している管理費は任意売却で清算できるのか?
- 連帯保証人がいても任意売却できるのか?
- 連帯債務者と連帯保証人との違いは?
- 結婚後・離婚後の任意売却について
- 裁判所からの競売開始決定通知とは
- 任意売却にかかる費用の内訳について
- 滞納開始から任意売却の流れについて
- 任意売却の悪質業者とのトラブルにご注意!
- 親族間売買と相続関係について
- 引越し費用と当面の生活費について
- 裁判所からの封書は絶対に読むこと!
任意売却とは
任意売却とは、住宅ローン等の借入金が返済できなくなった場合、
売却後も住宅ローンが残ってしまう不動産を金融機関の合意を得て売却する方法のことです。
任意売却は「任売」とも言われています。「任意売却取扱主任者」を「任売主任者」と省略して表記したり、競売、公売と比較する際に、任意売却を単に「任売」と省略して呼ぶこともあります。
住宅ローンを滞納・延滞すると、債務者がローンを分割で返済する権利(期限の利益といいます)が失われてしまい、お金を貸した金融機関は残っている住宅ローンの全額を一括で返済することを要求してきます。残債を一括で返済できない場合、金融機関は担保となっている自宅を強制的に売却し、その売却代金から貸したお金を回収します。
また、担保になっている不動産を強制的に売却するのが競売です。競売は所有者の同意なしに売却することを裁判所が認め、裁判所が所有者に代わり、物件の購入者(最高価買受人)をオークション形式で決定します。競売には様々なデメリットがあるため「自宅を競売にしたくない。何か方法は無いか」という問合せが多いです。
任意売却の専門相談機関としては「全国住宅ローン救済・任意売却支援協会」があります。この協会は、弁護士が主体となり、税理士、司法書士、不動産鑑定士、宅地建物取引士等が集まった任意売却の専門家集団です。協会設立依頼、任意売却による債務問題の解決に特化しており、任意売却を含む債務問題に対して豊富な経験とノウハウを持ったスタッフが、相談者さまの住宅ローン問題に対して、最適な解決方法を無料でご提案しています。
任意売却のメリットとデメリット
任意売却を行う上でのメリットは以下のとおりです。
- 通常の販売方法で売り出しますので所有者の経済事情が知れわたりません。競売では裁判所やインターネットで公告されてしまうので競売物件として友人知人や近隣の住民に知れ渡ってしまう可能性が高いです。
- 市場価格で売却できますので競売に比べて高く売却できる可能性が高く、価格に納得したうえで売却することができます。競売の場合は任意売却に比べて安価での売却になってしまう可能性がありますし、いくらで売れるかわからないという不安があります。
- 契約日や明け渡し日など売却に関して、買主様に希望を主張できるので職場(会社)や子供の学校などに影響がありません。
- 引越しするにあたって引越し費用の一部を売却代金の中から控除してもらえるので金銭的負担が軽減されます。
- デメリットは競売に比べて短期間で引越しをしなければならないことです(平均して3カ月~6カ月早く引越さなければならなくなります)。
任意売却のメリットデメリットについては協会のホームページが詳しく解説しています。
任意売却の仕組みと成功・失敗
一般的に所有する不動産を売却する場合、その不動産に抵当権が設定されている場合には、売却時に債権者へ借入金を全額返済して抵当権を解除してもらわなければなりません。しかし、売却代金で全額返済できなかったり、不足分を自己資金で補えなえない場合でも抵当権を解除してもらって売却することを任意売却と言います。つまり売却後も借入金が残ってしまう売却方法を指します。
任意売却を成功させるには所有者はもちろんのこと、債権者、つまりお金を貸してくれた金融機関の協力と売却を担当する不動産業者の任意売却に対する認識力や経験が重要です。債権者が非協力的だったり担当する不動産業者が任意売却に対する経験が浅かったりすると売却出来ずに競売になってしまう可能性が高いです。
また、債務者が売却に対して非協力的の場合、購入希望者との契約締結に至らないため競売になってしまう可能性もあります。従って、債務者・債権者及び販売を担当する不動産業者の三者が協力して取り組まないと任意売却は成功に至りません。
任意売却と競売の違い。競売の回避方法は?
任意売却は売却しても借入金を全額返済できずに債務が残ってしまう方法ですが、そのほかは通常の不動産売却と同じです。任意つまり債務者の意思で売却することを指します。競売では一般競争入札と言って債権者が債務者や連帯保証人が所有する不動産の売却を裁判所へ申し立て債権者の申し立てが正当と立証された場合に裁判所が職権(裁判所の権限)で強制的に売却することを指します。他方、任意売却は債務者の意思で売却するため明渡しの時期も債務者が決めることができます。
また、任意売却では売却後の返済方法や返済額の希望などが通り易いです。他方、競売では競売費用は遅延損害金などが上乗せされるので借入金がどんどん膨んでいきます。また、競売の場合は室内を内覧させることなく売却するため任意売却より安価での売却となってしまうケースが多いです。
したがって、競売は債務者にとって全くメリットがありませんので、返済が困難になった時や今後、返済が困難になりそうだと感じたときは躊躇せず、すぐに任意売却などの方法で解決に取り組んだほう望ましいといえます。
任意売却と自己破産について
任意売却した後も殆どの場合では借入金が残ってしまう可能性が高く、これを「残債務」と言います。購入時の自己資金や毎月やボーナス時の返済額にもよりますが、一般的に返済期間が約25年以内と短い場合は残債務が残る可能性が高いです。任意売却後に債権者と話し合いを行って毎月の返済額を決定しますが、通常は月額1万円~5万円が返済額として設定されます。従って、残債務が500万円の場合、月額万円の場合には500ケ月(40年以上)を要してしまい、一生払い続けて行くことになってしまい、債権者・債務者双方にとってメリットがありません。そのような場合は債務整理の一環として「自己破産」の申し立ても考えるべきです。
自己破産の申し立てによって債務が免責されれば借入が無くなりますので金銭的にも精神的にも余裕が生まれ生活が豊かになります。自己破産を申し立てると給料を差し押さえられるとか勤務先に知られてしまうなどの誤解が多いですが、実際のところ世間的な生活の変化は全くないため心配はありません。
自己破産したら借入金は帳消しになるのか?
自己破産を申し立てると裁判所で審査されます。自己破産を申し立てに至る経過によって裁判所が自己破産を認めるか否かの判断がされます。ギャンブルや遊興や無計画な借り入れなどの浪費によってできた借入れについては認められないケースが多く、また、裁判所の判決によって言い渡された損害賠償金や税金などは自己破産しても支払い義務が生じます。
その他、致し方ない事情によって自己破産を申し立てられていると裁判所から認められた場合は「免責」と言って損害賠償金や税金の支払い義務が消滅します。自己破産してから7年間経過すると再度一度自己破産することができますが、その場合には裁判所の審査が非常に厳しくなるため免責許可が下りない可能性があります。また、自己破産すると最低5年間は金融機関から借入することが出来なくなるため、自己破産は慎重にするべきです。
住宅ローンの抵当権(担保権)について
抵当権とは簡単に言えば、金融機関がお金を貸し付ける時に、その担保として借主の不動産を確保することを指します。このことを「抵当権」と言い、確保したことを公に証明することを「抵当権の設定」と言います。抵当権には「抵当権」と「根抵当権」があります。抵当権は「確定債権」といって、借入金額が債権債務になります。他方、根抵当権はその金額以内の金額であれば返済と借入を何度でも繰り返せる抵当権になります。よって、抵当権は住宅ローンなど債務者が再度の借り入れを起こさずに返済をするだけの権利であるのに対し、根抵当権は事業資金の調達などに利用される権利になります。抵当権、根抵当権のいずれも借主が返済を怠った場合、一般的には6カ月以上で債務者は「期限の利益」を喪失するため、債権者は担保権の実行により競売を申し立てて貸し付けた金銭の回収を図ることが出来ます。抵当権(根抵当権含む)は登記した順番によって債権を回収する権利(先取特権といいます)が生じます。また、少し難しい話にはなりますが、マンションの管理費や抵当権の設定以前に支払い義務が到来している税金等は抵当権に優先して先取りする権利があります。
任意売却後の残債務の返済はどうなるのか?
任意売却でいう「残債務」とは、任意売却して債権者へ売却代金を支払っても借入金残額が返済できずに残ってしまう借入金を指します。本来は売却と同時に全額を返済しなければ金融機関は抵当権を解除しませんが、任意売却することを承諾した債権者(金融機関)は残債務が残ってしまう売却でも抵当権を抹消します。それにより担保物件を持たない無担保債権となります。
残債務についての解決方法については、債務者と債権者とが話し合って返済額の取り決めをします。一般的には債務者の経済的事情を債権者へ説明したうえで返済額を決定し、比較的債務者の希望額が了承されるケースが多いです。
また、住宅金融支援機構雄等の公的金融機関以外の債権者は、残債務を請求する権利(求償債権)を債権回収会社へ転売(債権譲渡)する場合があります。転売価格する価格は一般的に残債務額の50分の1~200分の1と言われていますので、当初の債権者(金融機関)へ返済を続けるよりは、債権譲渡された債権回収会社と話し合えば少ない金額で返済が完了(完済)する場合があります。
任意売却が不成立になる原因とは?
対象物件の任意売却が不成立になり、結果的に競売に移行してしまうことは多々あります。その原因としては以下が挙げられます。
1)債務者(所有者)が非協力的。
2)債権者の売却可能価格の想定間違い。
3)仲介する不動産会社の任意売却に対する経験と知識の欠如。
1)につきましては、買主の内覧に非協力的であったり、室内の清掃が不十分で、買主が物件に対して好印象を抱かないため契約に至るケースが少ないです。2)の場合は任意売却できずに競売に移行してしまう一番多い原因と思われます。対象物件の売却を開始する場合、債権者と仲介を任された不動産業者はそれぞれ売却可能価格を査定しますが、仲介業者が現地を細かく調査して価格を算出するのとは対象的に、債権者は近隣の事例を参考にして机上でのみ算出するため、実際の相場より10~30%も高く物件を査定してしまうケースがあり、それが原因で売れ残ってしまう訳です。3)は、債権者との交渉などの手続きが面倒で債務額全額と仲介手数料を上乗せした金額で売却しているために市場価格よりも割高になってしまうことで売れ残ってしまうパターンです。
住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の交渉について
住宅金融支援機構(以下、機構)は以前は直接融資、現在は金融機関に対しての保証業務が主な業務となっています。機構の借り入れの場合は6カ月の滞納をしていなくても専用の「任意売却申出書」を提出すれば任意売却することが可能です。提出先は滞納前ならば借り入れをした銀行の窓口、滞納中ならば機構の債権回収を担当する債権回収会社へ提出することになります。機構の場合には、任意売却に積極的に取り組んでいるため2~3カ月滞納すると任意売却を奨励するような文書が債務者のもとへ送られてきます。機構の物件を任意売却する場合、担当する債権回収会社によっては買主は一般エンドユーザーに限られてしまうため不動産業者の買取りが拒否されるケースがあります。また、控除される引越し費用は上限30万円以内で認められる可能性が高いでしが、フラット35での借り入れや、借り入れ後3年以内の早期滞納、控除しなければならない諸経費が増大な場合、引越し費用が控除されません。
任意売却が可能な滞納期間と状況とは?
基本的に住宅金融支援機構を除いた金融機関で任意売却による返済を認めている金融機関の任意売却の場合は、6カ月間滞納したり、自己破産などの任意整理を行うことで期限の利益の喪失をすれば任意売却が開始できます。しかし、任意売却が一切認めず競売での回収しか受け付けない金融機関もありますので、あらかじめ債権者である金融機関に問い合わせすることが必要です。売却活動を開始して3~6カ月経過しても売却が成立に至らない場合には債権者は並行して競売を申し立てることが出来ます。もちろん競売中でも入札の前日までは任意売却が可能ですが、実際には開札日の約一カ月前までに買主が決まっていないと住宅ローンも申し込みや審査、債権者は抵当権の抹消に必要な書類の準備が間に合いません。抵当権者が1社だけの場合には時間が押し迫っていても協力してもらえる可能性が高いですが、いわゆる後順位債権者は面倒くさがって非協力的なケースが多いです。
マンションの滞納している管理費は任意売却で清算できるのか?
マンションの管理費と一口に言っても、1)管理費、2)修繕積立金、3)駐車場使用料、4)駐輪場使用料などの費用があります。任意売却したからと言ってこれらの費用を任意売却で清算しなければならない決まりはありません。しかし、管理費と修繕積立金につきましては、滞納をしたまま売却した場合、マンションの管理組合は次の購入者にその滞納金を請求することが認められているため、任意売却を実行するためには債務者がこれらを清算してから引き渡す必要があります。従って、任意売却の場合、諸経費として控除し決済時に支払いを完了させることが慣例となっています。但し、競売の場合には、債務者が支払いをすることが少ないため、殆どのケースでは落札者が滞納管理費や滞納修繕積立金を負担することになり落札者がのちのち債務者へ請求する場合もあるようです。なお、3)と 4)の駐車場・駐輪場の使用料につきましては次の購入者への請求権がありません。
連帯保証人がいても任意売却できるのか?
連帯保証人(以下、保証人)がいても任意売却することは可能です。ただし、保証人の協力と信頼関係が必要となります。任意売却する以前に滞納が発生した時点で債権者から保証人に対し、返済の督促が行われているので保証人はすでに債務者の経済状況を理解しています。従って、債務者は保証人にすべてを説明し、できる限り迷惑を掛けないよう手続きをする必要があります。任意売却することを債権者が認めた場合、保証人は売却完了後に債権者と残債務の返済について話し合いを行わなければなりません。連帯保証人は債務者と同等の立場ですから本来債務者と同じような返済方法や返済額を要求されますが、実際には債務者よりも寛大な対応をする債権者が多いです。よって、保証人に対しては資産を売り払って返済を要求したり、保証人の不動産に抵当権を設定するなどの強引な回収を行う債権者は少ないと思われます。
連帯債務者と連帯保証人との違いは?
定義では異なりますが、実生活において連帯債務者と連帯保証人はあまり差が無いように思います。連帯債務者とは1物件について複数人で購入(共有)する場合の債務者を指します。例えば、ご主人と奥様がそれぞれの収入を合算してマイホームを購入した場合、所有権はご主人と奥様が分け合って所有します。その場合、ご主人も奥様も債務者としてローン全額に対して保証し、返済する義務(連帯債務)が発生します。また、連帯保証人は債務者個人に対して保証するため、万一、債務者が滞納した場合には債権者からの要請で債務者に代わって返済をしなければなりません。いずれの場合でも債務者が返済を滞納した場合は、連帯保証人は債権すべてについて債務者と同等の返済義務が生じることになります。そのほか連帯債務者の場合は、住宅ローン控除の適用が受けられますが、連帯保証人は受けれません。
結婚後・離婚後の任意売却について
マイホームを購入する時期は、大抵の場合において結婚が決まっている時か結婚して10年以内が多いです。購入する際はご主人が定年(60歳)や65歳ぐらいまでに返済が完了できるように返済計画を立てますが、長い夫婦生活を続けていくうえで、勤務先の倒産やリストラ或いは減給やボーナス・退職金の減額、ご主人やご家族の病気などの要因により思い描いた返済計画が崩れてしまうことが多々あります。そうなってしまうと夫婦仲も冷え切ってしまい喧嘩が絶えなくなって離婚に至ってしまう例も多く見受けられます。また、奥様が連帯債務者や連帯保証人になっている場合、離婚後もその責任がついて回りますので、もし再婚しても新しいご主人や親戚にも被害が及んでしまう可能性があります。よって、ご主人・奥様それぞれの今後の人生を鑑みた場合、離婚前に任意売却することで可能な限り金銭問題を解決して心配を無くしたうえで、お互い再出発をするべきと思います。
裁判所からの競売開始決定通知とは
借入金の返済を滞納し、返済する意思を伝えなかったり不誠実な対応をした場合、債権者は裁判所に対して競売の申し立てを行い、裁判所が申し立てに問題が無いことを認めた場合には競売が開始されることになり、それを知らせる「競売開始決定通知書」(以下、通知書)が裁判所から特別送達で送られて来ます。特別送達とは公的機関が文書を送るために使われる郵便物で、受取拒否はできませんし、もし長期で不在の場合はポストなど受取に関わるものに投函しただけで配達完了となります。特別送達は通知書以外にも支払督促や少額訴訟の呼び出しでも使われます。いずれの場合でも放っておくと大問題になりますので特別送達が届いた場合には必ず開封して文書の中身を確認しなければなりません。また、その後しばらくすると、物件の調査を行うため裁判所の執行官と不動産鑑定士が訪問する旨の文書が裁判所から送られてきます。その文書も大切ですので必ず開封して確認しなければなりません。
任意売却にかかる費用の内訳について
任意売却で売却する場合には、通常の売買取引と同様の諸経費がかかります。費用の内訳は、①仲介手数料(売却金額の3%+6万円及び消費税)、②抵当権設定登記の解除費用(一般的には抵当権1本について12,000円前後)が最低限債務者の負担となり、場合によっては測量費用や付帯設備の修理費、残置物の撤去や処分費などが必要になります。しかし、実際には債務者がそのような費用を自己負担で準備できる可能性が非常に少ないので、任意売却の場合は筆頭債権者に対して、必要な諸経費を配分表をもって説明し、同意を得たうえで売却代金の中から諸経費と後順位債権者のハンコ代を控除して支払います。もし販売が不調で並行して競売を申し立てられてしまった場合は競売申し立て費用(約60万円~)やそれまでの遅延損害金を残債務に上乗せされてしまいます。
滞納開始から任意売却の流れについて
滞納が始まって約6カ月間(6回)経過すると分割返済の権利を失います。これを期限の利益の喪失と言います。そうなった場合、金融機関は債務者だけでなく連帯保証人や保証会社に一括返済を要求すると同時に任意売却の手続きを奨励してきます。保証会社が保証している場合は保証会社が債務者に代わって残債務を金融機関へ返済し、債権は保証会社へ移転します。これを求償債権の取得と言って債務者はその後は保証会社へ返済することになります。債務者が任意売却を進める意思を債権者へ示せば競売申し立てを停止し、不動産業者と協力して任意売却を進めることになり、その後、不動産業者と債権者はそれぞれ独自に価格査定を行ったうえで販売価格について話し合いを行い、買主を募ります。買主が決定したら、売却後の残債務の返済方法について債権者と話し合います。返済額は、生活に影響を及ぼさない程度の金額となる可能性が高く、月額万円~5万円が一般的です。もし月額の返済がまったく不可能な場合は、自己破産の申し立てを行って免責してもらう解決方法もあります。
任意売却の悪質業者とのトラブルにご注意!
近年は非常に少なくなった傾向にありますが、やはり今でも任意売却に関するトラブルは多数報告されており、裁判所の特別送達の中にも任意売却の業者との接触は控える旨の文書が記載されています。そもそも任意売却は通常の不動産取引の資格や知識・経験のほかに、民法・民事執行法・租税法・弁護士法・登記法・個人情報保護法等の知識と、あらゆるタイプの債権者や弁護士との取引経験が必要な大変難易度の高い不動産取引です。従って、会社の規模や年齢でなく個人の能力の高さが任意売却の成否を決める業務ですので、有名で大手な不動産会社だからとかの理由で信頼することや携帯電話だけでしか連絡がつかない業者に依頼することは非常に危険で注意しなければなりません。また、裁判所の「配当要求の期日公告」によって自宅に訪ねて来て「競売を取り下げさせる」「引越し費用を500,000円手元に残してやる」などと甘言を言って媒介契約を迫ったり、「権利書を預からせて欲しい」などと迫る業者は非常に危険ですので絶対に近づかないようにしてください。
親族間売買と相続関係について
親が所有する不動産を親族、主に子供が買い取ることを親族間売買や親子間売買と言います。これは何らかの理由で親がローン返済が困難になってしまったが、どうしても手放したくない場合に用いられる特殊な取引形態です。この取引の最大のメリットは、新たにローンを組むことで返済期間が延長されるため月額の返済額が低くなることです。そのほか、高齢者が同居している場合、引越しでの身体的負担を掛けることを回避できます。他方、デメリットは、親のために住宅ローンを組んでしまうとそれが完済するまで自らが所有する目的で新たにマイホームを購入することができない点です。また、親族間売買について一般の金融機関は融資を認めませんので、専門の金融機関で一旦購入し、その後しばらく経過した後に借り換えをするスキームを取るケースが一般的な取引方法となっています。
引越し費用と当面の生活費について
引越しをするのは①転居先を借りる費用、②転居先への移動費が必要になります。①について、近年は礼金不要が主流のため、敷金が1~2か月分、前家賃1か月分、仲介手数料1か月分、保証料1か月分の場合、家賃の4~5か月分が必要となります。仮に月額6万円の部屋を借りる場合は24万円~30万円が必要となり訳です。次に②ですが、一般的に夫婦と子供2人の4名家族で約15万円~20万円が必要になります。よって、引越しには40万円~50万円が必要となるため、債権者によって最大30万円の引越し費用を控除されても10万円~20万円が不足することになり、そのための自己資金を準備しなければなりません。また、転居後の生活費も考慮すると一般的には50万円以上は蓄えておく必要があるため、住宅ローンの返済を停止した返済分のお金を少しでも引越し費用等として蓄えておいたほうが望ましいです。
裁判所からの封書は絶対に読むこと!
返済を滞納したい人やマイホームを取り上げられたい人なんて世の中に存在しません。何らかの事情によって支払えなくなってしまっており、なんとか返済の遅れを取り戻そうとして必死になって働いている人や、働きたくても働けない人が多いです。皆さん夜も眠れないぐらい悩んでいるか、すでにそれも通り越して「どうにでもなれ!」とヤケになっている人もいらっしゃるかと思います。このような状況の人へ、次から次へと督促状を送付しても開封する気持ちになるはずがありません。思い悩んでいることを掘り返すような手紙の内容と分かっていて、わざわざ見る少ないでしょう。その気持ちよくわかりますが、そのような封書の中に裁判所から送られてくる非常に重要な封書が紛れ込んでいる場合があり、それを見過ごしてしまったばかりに取り返しのつかない状況に陥ってしまう人もいますので、裁判所からの封書は絶対に読むようにしょう。